ある夫婦の愛の物語「究極の愛」

佐藤康行が、昨年来より同時に7冊の本を書いていることは、ご存じでしょうか?

佐藤康行には「矛盾がない」という特徴があります。

ある意味、人間は矛盾に満ち、人生は矛盾だらけとも言えます。
だから、全く違うものを同時にすることは、自分の中に起こる矛盾にぶっつかり出来ないというのが普通です。

しかし、佐藤康行にはそれが出来るのです。
だからこそ、7冊の全く違う種類の本を、矛盾なく、同時に書くことが出来るのです。

「矛盾の奥はひとつ」
そう佐藤康行は言います。

 

では、今日から始まる「究極の愛」。
是非楽しんでお読みください。

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<この話は実話ですが、登場人物など、多少変えたストーリーを設定しています>

「プロローグ」

「めいこさん、本当にありがとう……。一男さんをこんなに幸せにしてくれて……。
わたし、いつも二人を見ていたのよ」
彼女の耳に突然聞こえてきた、思いがけない人からの言葉!

その途端、川谷めいこさんはわっと泣き崩れ、嗚咽が止まりません。
めいこさんは、溢れる感動と申し訳ないという後悔とで、心と体が震え、ただただ泣くしかありませんでした。
そして、あとからあとから、熱い涙がとめどなく彼女の頬を濡らし続けたのでした。

そこは、静かなカウンセリングルーム。
穏やかな温かい雰囲気の中、ある夫婦が佐藤康行のカウンセリングを受けていました。
佐藤の指導のまま、夫婦二人で向かい合って、会話をしている最中、突然、その出来事は起こったのでした。

泣きじゃくる彼女の前に、途方に暮れる夫の川谷一男さん。
佐藤の優しい穏やかな声が、カウンセリングルームに響きます。

「めいこさん、何が起こったのですか?」
佐藤の穏やかな声に、安心したように、めいこさんは、今、自分に起きた、信じがたい出来事を話し始めるのでした。

この出来事は、ある夫婦に起きた出来事です。
男と女が愛し合うとはいかなることなのか?
男と女の究極の愛とは、永遠の愛とはいかなるものなのか?

この永遠のテーマが、明らかにされた、真実の出来事です。

こんにちは。
佐藤康行です。

今から私がお話しするこの話は、ある男とある女が、過去を変えた出来事です。
そして、心から結ばれた、そんな話です。
それを私は「魂の結婚」と呼んでいます。

二人に起きた出来事と、その仕組みを、今から皆さんにお話ししてまいります。 

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川谷一男さんとの出会い


私が夫である川谷一男君と出会ったのは、今から12年ほど前のことです。
彼が私を訪ねてきたのが初めての出会いです。

少し気が弱そうだけど、優しそうな誠実そうな男性、それが私の初印象でした。

「何か、お困りのことがあるのでしょうか?」
「佐藤先生、私はどうしたらいいのか、どうやって生きていったらいいのか、もうわからなくなりました。」

彼は、私の書籍を読み、自分の今の泥沼の人生から救ってくれるのは、私しかいないと思って、私のカウンセリングを受けにきたのでした。

「佐藤先生、私、今1.600万円ほどの詐欺に会って、どうしたらいいのかわからないのです」

聞けば、そのお金を貸すために、知り合いから借金までしているようなのです。
そして、それ以前にも数回、お金を知り合いに貸し、そのお金もまだ戻ってきていません。

「佐藤先生、私がお金にルーズなところがあるから、こんなことになるのでしょうか?」
真面目な彼は、自分が被害者だというのに、さらに自分自身を責めているようでした。

「こんなにお金にルーズな私は、もっともっとお金のことでひどい目に合うのではないでしょうか?
私の人生、これからどうなっていくのでしょうか?」

彼は、過去を悔み、未来に怯え、一歩も進めない状態にあるように見えました。

「心の法則」
1.原因と結果の法則(フイルムとスクリーン)

まず、私は、山谷一男さんに、人間の心に起きている法則について説明しました。
私たちがいかにこの「心の法則」に振り回されているかということを、知っていただくためです。

今起きている現象には必ず原因がある。
人間の心に起きている出来事で、原因が無い結果(現象)はありません。

例えば、あなたの前に起きている出来事を、スクリーンに映る映画だとしたら、その映画を映し出しているフイルムがあります。

スクリーンに映る映画(結果)が、いくら気に入らないからといって、そこに手をつけようとしても、もともとそれを映し出しているフイルム(心)そのものを変えなければ、延々とその映画が続くことになります。

いくらラブストリーを見たいと思っても、フイルムが戦争の物語が入っていたら、スクリーンをどれだけ変えても、映る映像は戦争映画しか写りません。

そして、フイルムには撮影現場があるのです。
その撮影現場とはどこか・・・・・?

「川谷さん。あなたの人生の一番大きな撮影現場はどこでしょう。
あなたが生まれてから、これまでの過ごしてきた、あなたの人生で、一番あなたに影響を与えた方。それは、どなたですか?」

「私の人生に、一番影響を与えた人……。
……それは、両親です。」

「そうですね。
あなたがオギャーと産まれた、その時から、あなたの一番近くで影響を与え、DNAとしても影響を与え、考え方や体質、良いも悪いも含めて、一番影響を与えてくれているのは、ご両親ですね」

「では、川谷さんのフイルムに、どのような物語が刻まれているのか?
それを、私と一緒にひも解いていきましょう」

私は川谷さんの過去へ遡っていきました。

彼が語りだした、これまでの人生。
彼の経験した、過酷な運命ともいえる話を、私はじっと聞いていました。

(注)<この話は実話ですが、登場人物など、多少変えたストーリーを設定しています>

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山谷一男さんと両親の関係

(川谷一男語る)
私は、実は、生まれつき右目が見えません。
未熟児で生まれたため、右目の視神経が成長しなかったらしく、右目が生まれつき見えていません。

しかし、見た目は両方の眼に問題が無いかのように見えるらしく、小さい頃は、周りの人に誤解され続けてきたのです。
自分では正面を見ているつもりでも、顔が斜めになっているため、わき見をしていると誤解され、学校の先生にもよく注意をされました。
子供ながらに、なんて理不尽なんだと思いました。

友達にも、そんな私は、よくいじめられました。
クラス全員が共謀して、私をだましたこともあります。
部屋に閉じ込められて、外からカギをかけられたり、帽子やスリッパを隠されたことなどはしょっちゅうでした。

いじめは小学校から中学までずっと続きました。

中学の時、担任の先生に相談しました。
そうしたら、担任の先生が「君が問題じゃないのか?君の態度を変えていけば、みんなもいじめなくなるんじゃないのか」
まるで、私が悪いかのように言いました。

先生も、友達も信用できない……。もう誰も信用できない。
はっきり、そう思いました。

高校の頃には、全ての人がある意味、敵でした。
私は自分の心に壁をつくり、誰も自分の心の中に侵入をさせることはしませんでした。

母の事ですか?
はい、母は私にとても優しくしてくれました。

母の思い出で、忘れられない事があります。
それは、私が幼かった頃、良くわからなくて、母にたずねた事があるのです。
「お母さん、僕だけどうして右目が見えないの?なんで、僕は友達と一緒じゃないの?」

その時、母は、ハッとした眼で私を見つめました。
そして、今まで見たことのない悲しい表情をして、私をギュッと抱きしめました。
その母の腕から、母の悲しみが子供である私に伝わってきたのです。

「あっ!お母さんが悲しんでる。僕がいけないことを言ったんだ。」
僕も、ギュッとお母さんの腕を強く握りしめました。

多分、母は私を未熟児として産んだことで自分を責め、そして、苦しんでいたに違いありません。
無邪気にたずねてくる息子に、答える言葉がなくて、私を抱きしめたのでしょう。

その時、子供心に私はこう思ったのです「この話はしてはいけない話なんだ。この話はお母さんを悲しませる話なんだ」と思い、それ以降、私は母には絶対そのことを話題にする事はありませんでした。

そして、それ以来「自分の言いたい事や聞きたいことを、そのまま言ってはいけない。
そのままを話すと、大切な人を傷付けてしまうのだ」そう思うようになりました。
そして、知らない間に無意識下の深いところで「自分は、大切な人を傷つける存在なのだ」と思ったのかもしれません。

父の思い出……、そうですね……。
母は現在も健在ですが、父はすでに他界しています。
父は庭師でした。

実は、私は父をあまり好きではありませんでした。

父は、いつもいつも、汚れた泥だらけの姿で、近所の庭を手入れしていました。
そんな父を、私は心の中で恥ずかしいと思っていました。

「なんで友達のお父さんのように、背広とネクタイで、会社へ行かないんだろう。
なんで、うちのお父さんだけ、泥だらけで、ぼろぼろの格好をしているんだろう。」
友達に恥ずかしくって、友達に泥だらけの父を見られるのは嫌でした。

「お父さんが友達に見つかりませんように……!」そう思っていました。

でも、友達は私の父の姿を見て、やっぱり私のことをいじめました。
「一男のお父さんは、泥だらけだ。バカボンのお父さん」そう、からかうのです。

私は、右目のことだけでなく、父のことでまで、友達からいじめられることになりました。時折、学校の校庭の仕事も請け負っていた父を、恥ずかしくて仕方が無く思ったりしていました。
「お父さんが泥だらけだから、僕は友達からいじめられてしまうのだ」そう思っていました。

庭師である父は、雨が降れば仕事は出来ません。
仕事が無ければ、お金も入ってきません。
父は毎晩酒を飲み、そして、時には大きな声で怒鳴ったりします。

そんな父を、私は心の中で、軽蔑していました。
父はレベルの低い人なんだと、思っていました。

父のようにはなりたくない。
そんな気持ちから、私は塾の講師の仕事を選んだのかもしれません。

一番覚えているのは、父が母を私のことで大声で怒鳴っている場面です。
私は、幼少時には喘息もちで、夜中の1 2時頃になると発作が出るのです。
昼間は発作が出ないものですから、病院に行くのを嫌がる私を、母は無理に病院には連れていきませんでした。

でも、夜中になると、ひどい喘息の発作で苦しむ私を見て、そのたびに父は大声で、母を怒鳴るのです。
『おまえは昼間になにをやってったんだ!
なんで、一男を病院に連れていかなかったんだ!』
父に怒鳴られるたび、母はつらそうにしていました。

父の怒鳴り声と、私の苦しむ発作とで、母も泣きながら、私の背中をさすってくれたり、抱きしめてくれたりしてくれました。

私は子供心に、私が咳をすると母は父に叱られるのだ。
自分が咳をするから、母は苦しむことになる、そう思って、どんなに苦しくても、咳をすることを我慢したのでした。

昼間、病院へ行けば良かったのですが、子供だった私は、病院へ行くのは嫌で、ただ自分が発作が出た時に、咳を我慢しなければならないと、そんな風に考えていたのです。

私は、川谷一男さんとご両親との話を聞き、彼に尋ねたのです。

ずっといじめられてきたようですが、それだけの長い間、いじめられてきた原因について、
右目が見えないということ以外、何か心当たりはないか。
高校時代も、親しい友人がいなかったようですが、そこも心当たりがないか。

さらに、川谷さんの心を深く掘ってもらいました。

「川谷さん、心の法則にはもうひとつあります。
それは『鏡の法則』というものです。それはご存知ですか?」

こちらがニコッとすると、相手もニコッとする。
こちらがブスッとすると、相手もブスッとする。
まるで、鏡のように自分の姿が映るという法則です。

彼は聞いたことがあるようでした。
そこで、彼に、ご自身の生い立ちの中で、
鏡の法則になっていると思われるところがあるかどうかを尋ねました。

「いかがですか?
川谷さんの生い立ちで、鏡の法則らしきことはありますか?」

心の法則
2 鏡の法則

(川谷一男語る)

思いつく事は、いくつかあります。
中学の頃には、眼の焦点が合わない事は、自分でも努力して人に分からないようになっていましたから、
たぶん、それ以外の要因があったのでしょうね。

先ほども言いましたが、私は全く人を信用できなくなっていたのです。
そして、自分の方から心を閉ざしていたのです。

ひとりでいるのが一番楽だとそう思って、人との関わりを避けていたところがあります。

私が彼らを信用できず、友人だなんて思えなったから、そのままの姿が鏡のように映ったのかもしれません。
私がみんなを嫌っていから、みんなも私を好きになってくれなかったのかも知れません。

母のことも、わたしが母を気遣っていたから、母もずっと、わたしのことを気遣ってくれたかもしれません。

高校時代以降、私はひとりの方が気楽だと思い、人が近寄ってくることを避けていました。
だから、誰も近寄らなかったのかも知れません。
その結果、友人がひとりも出来なったのかもしれません。

佐藤先生の言われる通り、鏡のように自分が映っていたのでしょう。

でも、先生。それだけではまだわかりません。

私には、実は、もっともっと辛いことがありました。
それは、私の今までの人生の中で、最も辛かった出来事です。

それは、今、佐藤先生がおっしゃった、「鏡の法則」とも、当てはまらないような気がします。

何故こんなにつらい出来事が、私に起こったのか、佐藤先生、是非、教えてください。

そして、彼は次なる彼の身に起こった、人生最大の悲劇を語るのでした。

私が大学生の頃でした。
生まれて初めて、私のことを理解してくれる女性が現れました。
生まれて初めてでした。

こんな性格ですから、相変わらず周りから誤解を受け続けていました。
そんな時、由香という女性が、私の知らないところで、周りの人に
「川谷君はそんなつもりじゃないと思うわ。」
「川谷君って、きっと、こういうことが言いたかったんじゃないかしら」
そう言って、私の誤解を一生懸命、解いてくれていたのです。

そのことを知っても、私の心は氷のように冷たくなっていたので、心が動く事はありませんでした。
でも、彼女の温かい心に、彼女の温かい笑顔に、彼女の温かい言葉に、私の心の氷は徐々に溶かされていきました。

生まれて初めて、私は人を信用することが出来るようになったのです。
そして、人を心から愛することが出来たのです。

彼女は、本当に優しい女性でした。
何時間でも私の話を聞いてくれ、私のことを深く理解してくれました。

このままじゃ駄目だと、自分の性格を変えようと努力している私に、
「焦らなくていいんじゃないの。無理しなくてもいいよ。」
「そのままでいいじゃない」
「今の一男さんが、私は大好きよ」
そう言ってくれました。

生まれてから、ずっと辛いことばかりの人生でしたが、彼女と出会って、私はその全てさえ忘れさえてくれるほどの幸せを感じました。
こんな私を「そのままで好き」と言ってくれる人。
私のことを「そのままのあなたが好き」と言ってくれる人。
毎日が夢のような日々でした。

ふたりでたくさん話しました。
自分の生い立ち。未来のこと。将来の夢。友達のこと。

カフェで、時間が流れるのを忘れるまで話したこともあります。
ふたりで小さなレストランでご飯も食べました。
ふたりで映画もみました。
ふたりでどこ行くともなく、話しながらずっと散歩をしました。
今まで何気なく暮らしていた日々も、彼女とふたりだと、本当に輝く日々にみえました。
この時間がずっと続くことを願っていました。

私と由香さんは、将来を誓い合うようになりました。
私はもうひとりぼっちではありません。
これからはふたりなのです。

ふたりで将来の夢を語り合い、いつしか来るであろう、ふたりの幸せな生活の夢を語り合っていました。
当然、来ると思っていたふたりの将来。
私は本当に幸せでした。

しかし、私にはやっぱりそんな幸せは来ませんでした。
私は幸せになれない運命なのでしょうか?

彼女は、ほんの少しのことで疲れるようになっていました。
彼女の体調が悪かったのに、一番傍にいた私は有頂天になって、彼女の体調さえ気づいてあげることが出来ませんでした。

彼女は私には何も言わず、ひとりで病院へ診察に行ってきました。
彼女の病名は白血病でした。

彼女が突然、入院することになり、そして、どんどん症状が進み、間もなく病室から一歩も外にも出られなくなってしまったのです。

最初、私はすぐに退院出来ると思っていたのです。
だって、彼女は元気だったのですよ。
あんなに元気で、いつも笑っていたのですよ・・・・。

私は毎日のように、病院へ足を運びました。
ベッドの中の由香さんは、みるみるやせ細り、今にも消えそうになっていきました。

そして、それから間もなく、彼女は両親のいる実家の病院に転院していきました。


私は彼女の病院に、片道何時間も電車に乗って、会いに行きました。
でも、彼女の両親は、私を彼女に絶対に会わせてくれませんでした。
彼女の両親は、私を恨んでいたのです。

彼女のお母さんは、宗教のようなものをやっていて、彼女のことを霊力があると言われている人に見てもらっていたのです。
すると、その人は、私が彼女に不幸を連れてきた。
私といると、彼女が不幸になると、そう言ったらしいのです。

彼女の両親は、すっかりそれを信じ、私を絶対、彼女に近づけさせないようにしていました

でも、それでも、私は彼女に会いたくて、会わせてもらえないことを承知で、何時間も電車に乗り、何度も何度もひたすら彼女のもとに通い続けました。

ところが、ある日、突然、彼女の両親が私を病室に入れてくれたのです。
彼女と会わせてくれたのです。
そして、私達をふたりにしてくれたのです。

久し振りに見る彼女……。
静かにただ私を見つめる眼は、天使のように透き通っていました。
私を見て、嬉しそうにはにかんだように微笑む顔。
大好きな彼女が、夢ではなく、本当に私の目の前にいました。

久し振りに、彼女とふたりっきりの時間を過ごしました。
私達は病室で、日々の何気ない話を、とりとめもなく話しました。

ふと話が途切れた時を待っていたかのように、彼女が私をじっと見つめ、こういったのです。
「一男さん、私のこと忘れないでね……。」

突然の言葉に、私は驚いて、大声で言ったのです。
「忘れるわけないよ!
これからも、ずっとずっと一緒だよ。
どれだけ、ご両親が反対しても、僕は君を絶対あきらめないよ!
死ぬまでずっとずっと、ふたりで生きていこう」
思わず彼女の手を握りました。

彼女はその時、何も答えず、私の手を強く握り返してきました。
思わず握った彼女の手は、細く細く冷たかったけれど、その手が強く私の手を握り返してくれた。
私にとってはふたりを永遠につなぐ、かけがえのない、命のロープのように思えました。

私が病室を出るとき、彼女は、輝くような静かな笑顔でベットから見送ってくれました。

「絶対離さない」そう思ったこの手が、私から離れていくなんて、その時の私は想像もしていませんでした。

その日から、数週間後。
彼女が亡くなったことを、彼女の友人からの電話で知りました。

・・・・・・そうか。・・・・・・・・・・そうだったんだ。
あの時、君はわかっていたんだ・・・・・・。

由香さん。もうわかっていたんだね。
ひとりで先に逝かねばならないことを・・・・。

君は分かっていたんだ。あの時・・・・・・。
私を置いていかなければならないこと、分かっていたんだ。
あの日は最後の日だったんだ。

君の最後の願いだったから、ご両親は私を病室に入れてくれて、君に会わせてくれたんだ。
彼女に最後の時間(とき)をあげていたんだ。

なのに・・・なのに・・・・
なのに、私は・・・・!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!

全部、私が悪いんだ。
私がもっと早く気づいていてあげれば。
いつも傍にいたのに、なんで彼女の病気に気づいてあげられなかったのか。

彼女のご両親の、私への恨みが、かえって救いにさえなりました。

こんな自分!
もっともっともっと恨んでください!

そして、彼女の最後の言葉が蘇ってきました。
「さようなら」じゃなくて、「一男さん、私のこと忘れないでね……。」
そう彼女は私に言ったんだ。

私は誓ったのです。
彼女を絶対忘れない!
一生、いつ何時も忘れるものか!
そう誓ったのです。

佐藤先生。
私が彼女を死なせてしまったのです。
私は、本当に不幸をもってくる人間なのです。
最愛の人でさえ、死なせてしまうのです。

だから、私に会う人はみんな不幸になるし、私は詐欺に会ったりもします。
私は、このまま生きていても良い人間なのでしょうか?
これからも、生きていっていいのでしょうか?

なぜ、私ばかりがこんな目に会うのでしょうか?
なぜ、わたしばかりがこんなにつらい思いをしなければ、ならないのでしょう。

なんでだぁぁぁーーーー!
私がいったい何をしたっていうんだ!


今までの辛かったこと、苦しかったこと、理不尽な事、許せなった事を話し尽くした川谷一男さんは、
思わず叫び声のような、悲鳴に近い声を上げて泣きました。

長年、我慢をし、ずっと心に溜めていたものが、一気に噴出したのです。

私(佐藤康行)は彼の肩を抱き、背中をさすりながら言いました。
「泣いていいのですよ。
思いっきり、全部、出していいのですよ。
我慢せず、思いっきり出すのです。

どれだけ恨んでもいいのですよ。
どれだけ悲しんでもいいのですよ。
何も我慢しなくてもいいのですよ。

思いっきり、泣いてください。
思いっきり、叫んで下さい。」

そう私が言うと、川谷さんは、私にすがるように、泣きながら叫びました。
「辛かったんだよ!
悲しかったんだよ!
苦しかったんだよ!
なんで、分かったくれなったんだよ!」

そして、その叫び声は
「由香さん、ごめん。私を許して下さい」
「お母さん、ごめんなさい!」
「お父さん、ごめんなさい!」という、懺悔の声に変わっていったのです。

しばらくすると、彼は少し落ち着いてきました。
そして、こういいました。

「佐藤先生、ずいぶんと心が軽くなったような気がします。
でも、私はこれからどうしたらいいのでしょうか?

私、以前、本で、起こる出来事は、全部自分の心が引き寄せているという事も読んだことがあります。
まさに、私の心のフイルムが回って、スクリーンに映像として映っているとしたら、
彼女が死んだことも、1600万円も騙されたのも、私の中にそういうフイルムがあるという事ですよね。

私が引き寄せたとも言えますよね。
全部、私の責任ですよね。

このフイルムがある以上、私は、これからもこういうことを繰り変えさなければならないということになります。
だとしたら、私は生きる意味は何なのでしょうか?
心の法則が理解できれば出来るほど、私はもう、どうにもならないという気持ちになるのですが・・・・・。

私の人生、ずっとこんな事の繰り返しになるのだったら、こんな私は生きていても仕方がないのではないでしょうか?」
そう、彼は、私に訴えました。

私は川谷さんを見て、こういいました。

川谷さん、だからこそ、こうやって佐藤康行と出会ったのですよ。
私は、今まで、10万人以上の人を過去何十年間にわたって、実際にカウンセリングしてきました。
そして、本人さえあきらめなければ、全ての人が生まれ変わったように人生を変えていきます。

私は事実を持って、証明してきたのです。

私がやってきたこと。
それは、過去も、今も、未来も一瞬にして書き換えることが出来るのです。
過去を全て、書き変えられると言ったらどうですか?
やってみたいですか?


「佐藤先生、そんなことが出来るのですか?
私の忌わしい過去も、この苦しい今も、将来にかけてずっと怯える未来も変えられるのですか?
そんな方法があったら、教えてください」
そう言うと、川谷さんは、私の目を真剣に見たのです。

川谷さん、
私が教えなくても、川谷さんの中にはすでに完全で完璧なあなたがいるのですよ。
それを私は「真(まこと)の我(われ)と書いて真我(しんが)」と呼んでいます。

真我とは、「内なる神」ともいいますし、「実相の心」とも言えます。
また、「愛そのもの」「喜びそのもの」「感謝そのもの」でもあります。
また、「宇宙意識」と言ってもいいのです。

一言で説明するなら「完全で完璧なる素晴らし心」です。
その心は、すでにどんな人の中にも、すでに存在しているのです。

ですから、誰かに教えてもらわなくて、学ばなくてもいいのです。
あるものをただ、出していけばいいいいのです。

「佐藤先生、私の中に、本当にそんなものがあるのでしょうか?
とても信じられません」
彼は、とても信じられないとでも言いたげな、不安げな顔で、私に尋ねました。

ではこれをやってみましょう。
私は、私が作った一枚の紙に書かれたワークシートを彼の前に出しました。

今から、川谷さんに、川谷さんの中にある「本当の川谷さんに出会ってもらいます

「本当のわたし・・?」
不思議そうな顔をする、彼をしり目に、私はワークの書き方を説明しました。

書き方はわかりましたね?
では、早速始めてみましょう。

川谷さんは驚いたようでした。
なぜなら、あまりにシンプルな紙が一枚目の前にあるだけだからです。

「佐藤先生・・・・。本当に大丈夫なんでしょうか・・・?」
さらに、不安げな声を出しています。

まずはやってみましょう。
やってみて、どうなるか、自分自身で実際に体験してください。

書き方がわからなければ、質問してください。

いいですか?川谷さん。
あなたの中には、全てすでに完全で完璧なものが備わっています。
ですから、自分でできるのですよ。

私はたとえば、産婆さんのようなものです。
生み出すのはあなたです。
私は、ただ、そのお手伝いするだけです。

(川谷一男さん語る)

わけがわからないまま、佐藤先生に言われるがままに、私は紙に書き始めました。
一番自分にとって忌まわしい出来事。
それらがあって「これで良かったこと」をいくつも書きます。

佐藤先生は、私が質問すると、どう書くのか、書き方だけを教えてくれるばかりで、あとは自分で書き続けるようにだけしかいいません。
おもいつくまま、書き始めました。

「今のことでいいのだろうか?
こんな内容で合っているんだろうか?
それより、本当にこんな、自分の考えばかり書いていて、本当に過去が変わるのだろうか?」

頭の中をいろいろな思いが駆け巡ります。
書き続けて、十数分・・・。
もう書く事がなくなりました。
ペンを止め、何を書こうか、考えていた時です。

佐藤先生の声がしました。
「ペン止めずに書き続けて下さい。
書けなくなったら、絞り出すのです。
同じことを書いてもいいです。頭に浮かんだことでもいいです。
合っているかどうかなんて、いいですから、とにかく、書き続けてください」

もう書けないと思いましたが、がむしゃらに書き続けました。
合っているかどうかなんて、もうどうでもいいや。
とにかく何でもいから書き続けました。
すると、頭が真っ白になったその時です。

あれっ?
瞬間、ある風景が頭の中に浮かんできました。

子供の時、私の発作が止まらないと、母はどんな夜中でも、私をおんぶして、20分ほどの病院まで歩いて、連れていってくれたな・・・。

その時の母の背中の温かさ……。
その温かさがあったから、大人になっても、どんなことがあっても私は頑張れた。

「喘息だったおかげで、私は頑張れる人間になった」そう書きました。
まるで、雲間の一点から太陽の光がサーとさしてきたかのように、
それを機に、次から次へといろいろなものがみえ始めます。

父が一生懸命働いてくれたから、自分は大学にも行けたし、塾の先生になれた・・・。
「父のおかげで、大好きな塾の先生になれた」そう書きました。

詐欺にあって、1600万ものお金を準備したとき、親戚の皆さんが、一生懸命お金を集めて貸してくれた。
私はみんなに愛されていないと思っていたけれど、こんなに多くの皆さんに愛されていた
「詐欺のおかげで愛されていたことがわかった」

どんどん、太陽の光が雲間からさしてくるような感覚です。
そして、厚く覆われていた雲が、太陽の光で薄くなってくる感じです。

塾の先生になって、生徒の心を大切にして、人の痛みがわかる自分になれた
「彼女が白血病になってくれたおかげで、命の尊さがわかった」
「右目がみえなかったおかげで、私は人の痛みがわかる人間になれた」

「あっ!」
瞬間、雲が消え、太陽の光がサァー――と差し込んできて、輝くようになったようでした。

私は右目が見えないおかげで、今、心の目が開いた。
私は右目が見えていたら、ここまで心を追究しなかったかもしれない。

あーーーーーー!!!!!
「右目が見えなったおかげで、心の目が開眼した」
そう書いた瞬間、まるで、稲妻にうたれたように、全身の細胞がビリっと電気にあてられたごとく、体全体がカァーーと熱くなりました。
と、同時に、涙がほとばしり出てきました。

それらが突然、稲妻のように湧き上がってきて、暗闇だった世界が、一瞬にして、眩しいばかりの世界になったのです。
そして、気がついたら、大声で泣いていました。

生まれてきたことへの感謝。
今まで周りの人を恨んできたことへの後悔。
父母、彼女への感謝。
周り全ての人への感謝。

心は愛と感謝と歓喜にあふれます。
「佐藤先生!!」
佐藤先生の前で、声を震わせて泣きました。
今まで感じたことのない熱いものが、腹の底の底からグググーー!と、湧きあがってくるようでした。

佐藤先生は「天に届く大きな声で、そのままの心を思いっきり言ってごらん」と言われます。
「おとうさーーん!ありがとうーーーー!
おかあさーーーん!ありがとーーーーー!
由香さーーーーん!ありがとーーーーーー!」
思いっきり、声の続く限り叫びました。

そして、人生で初めての、心の底からひっくり返ったような大声で、泣き続けました。

佐藤先生が、私を抱きしめて、私の耳元で「良かったね。川谷君。もう大丈夫だね。」そうおっしゃって下さいました。
「川谷君の過去も未来も、今、書き変わったんですよ」
そう言って、ただ、固く抱きしめてくださいました。

こんな自分がいるなんて!
こんな感覚があるなんて!
こんな涙は生まれた初めてでした。

生きてきた良かった!
自分は自分のままで良かった!
私は愛されていた!

ありがとう
ありがとう
歓喜の心が、全身を駆け巡るのでした。

それからの見える世界は、全く今までと違うようにみえます。
見るもの聞くもの全てが、今までのものとは全く違って見えるのです。
全てが、愛そのもの、喜びそのものに見えるのです。

私の過去と未来は、確かに、全て変わってしまいました。
そして、それからの私の人生は、全てが変わってしまったのです。

**************************
ここまでは、夫の川谷一男さんの人生が描かれていました。
今日から、場面が変わって、妻のめいこさんの場面です。

さて、めいこさんはどんな人生を送ってきたのでしょうか?

それでは、めいこさんの章をスタートします。


めいこさんの章

私、佐藤康行が、初めてめいこさんに会ったのは、私がグループカウンセリングをするにあたり、
事前カウンセリングをした時でした。

このグループカウンセリングのテーマは「男と女」です。

なかなか結婚できない男女。
結婚していていも、心が結びついている実感が持てない夫婦。
本当のソウルメイトってどういうことなのか?それを知りたい。
そんな皆さんが参加されます。

この「男女」というテーマのカウンセリングに参加してきためいこさん。

彼女の印象は、元気で明るく、自分の意思をしっかり持った女性という印象です。
受け答えもハキハキとして、いかにも頭が回り、仕事ではきっと頼りにされている女性だということは、すぐにわかりました。

彼女は30歳半ば。
男女について知りたい。
そして、もっと深く自分事が知りたいという理由で、私のカウンセリングを受けに来たのでした。

彼女の事前カウンセリングシートを見てみると、中学の時に母を亡くしたことと父親がアルコール依存症だった事が記入されていました。

『母は中学生の時に他界しました。
父は、アルコール依存症です。
私は父を許せない気持ちがありましたが、心の勉強をして、今では許せるようになっています。』と記載されていました。

彼女は、ここに来る前にも、いろいろ心のことは勉強してきたようでした。

それでは、私がめいこさんを、事前面談した時の様子を皆さんにお聞かせしましょう。

「めいこさん、まずはお父さん、お母さんとの今までのことを聞かせてください。」
この私の誘導に、めいこさんは、自分の人生を私に語り始めました。

めいこさんの人生
(めいこさん語る)

わたしの家族は、父と母、姉と私の4人家族でした。
父は仕事人間で、仕事をしているか、お酒を飲んでいるか、そんな姿しか記憶にありません。
私たち娘には、ほとんど関心が無いようでした。

必然的に、家族の要は母だったのですが、その母も私が中学の時に亡くなりました。
それからは、私の家族は、羅針盤が壊れた船のように、右往左往と海の上を漂う船のような家族でした。

だから、私はずっと両親への怒りが消えません。

母は、癌で亡くなったのですが、入院して3か月で、あっという間になくなってしまったのです。
母が余命わずかだということを父は知っていたのですが、父は母にも私たち娘にも内緒にしていました。

だから、私は母が亡くなるなんて・・・・。
全く思っていませんでした。


父は、母に余命わずかであることを悟られるのを恐れ、病院にも顔を出さなかったのです。
それを知らない母は、いつも父を待っていました。

「パパ、今日も仕事かしら・・・。」
「パパこないわね。いつ来るのかしら」
そう言いながら、母はいつも父が来てくれるのを待っていました。

父は病室へ母を見舞いにも来ず、一人で毎日浴びるようにお酒を飲んでいました。
そんな父を、私は怒りの気持ちで眺めていました。

家には、祖母が来ていて、私達の世話をしてくれていましたが、
他人がいきなりずかずかと家に入り込んできたような気がして、
ママのやっていたことを、勝手にルールを変えて不愉快でした。

私達、姉妹は、早くいつもの母のいる家庭に戻ってくれることばかりを考えていました。

ですから、母にも無意識に「なんでお母さん、病気になんかなるの?
家族がバラバラで、おばあちゃんが家に来て、パパはお酒飲んで、もう、むちゃくちゃよ」
そう、怒りが出てしまうのでした。

ちょうど、反抗期でもあった私は、誰彼ともなく怒りの気持ちが湧き、
さらには落ち着かない家の雰囲気にうんざりしていました。

病院へお見舞いに行くのですが、母には優しく出来ませんでした。
自分の本心も何も、母には表現できませんでした。

毎日の病院からの帰り道。
真っ暗になった夜道を、バス停までひとりで歩いた、あの時のこと・・・・。
あの満たされない気持ちは今でも鮮明に覚えています。

あの時の私は、自分がどうしたかったのか?
自分の心がどうなっていたのか?
ただただ、行き場のない自分の感情に、振り回されていました。

母は突然、亡くなりました。
あまり、覚えていません。その時のこと・・・・。
その時の感情も思い出せません。

ただ「絶対、泣かない!」そう思っていました。

泣いてなんてなるものか!
だって、私は悲しむ資格なんてないんだ。
ママとのお別れなんて、悲しめるような人間じゃないんだ。
ママに優しく出来なかった自分は、悲しむことは許されていないんだ。

ただただ、そんな感情だけがその時の私の心を支配していました。

なんで、パパは何も教えてくれなったの?
何も私達にも教えてくれなくて、お酒ばかり飲んでたの?
なんで、ママは突然いなくなったの?

私、ママに最後の最後まで優しくしなかったじゃない!
私、ママに最後まで、怒ってたじゃない!

こんな私は、泣く権利なんかない。
泣いちゃいけないんだ。
泣かない・・・・!

自分の心にガッチリふたを閉めて、カギをかけて、絶対心が漏れないようにしました。


父の会社の人が、泣かない私を見て、父に
「お嬢さんは随分しっかりしていらっしゃって・・・・。それだけでも・・・・・」
なんて、話していたけれど、何にも知らないくせに!

母が死んで、父はさらに酒浸りになりました。
そんなに寂しいんだったら、なんでママに会いに行ってあげなかったの?

死んだママの事ばかり思って、ただお酒ばかり飲んで・・・。
もうママは死んじゃったのよ!

パパは、目の前にいる娘のことなんて、眼に入ってないのね。
私達の悲しみなんて、考えてもくれてないのね。

父はついに、アルコール依存症で、病院に隔離されました。
「ほら、だからそんなことになるのよ。
パパは自業自得よ」
私は、そんな風にしか思えませんでした。

父は「もう、絶対飲みません」
そう病院の人に誓って退院した、その足で、帰りにお酒を飲んでいるような人でした。

だから、また入院。
娘のことなんて、私達のことなんて、眼中にないんですよ。
あの人は・・・・。

私たち姉妹は、病院のソーシャルワーカーの人に
「アルコール依存症の家族は、自分もアルコール依存症になるか、そういう人を結婚相手に選んでしまいます。
だから、あなたたちもカウンセリングを受けるように」そう言われ、
私と姉は訳の分からない、意味のないカウンセリングを受けさせられたのでした。

佐藤先生。
だから、私、結婚で幸せにはなれないだろうし、結婚もできないんじゃないかって思っているんです。
恋愛にも結婚にも、夢も希望も無いんです。
明るく元気にやっているけれど、でも、本当の私ってどれなのか?
自分がわからないんです。

友人に佐藤先生の「男と女」のカウンセリングをすすめられて参加しました。
こんな私でも、大丈夫ですか?

一気にまくしたてた、めいこさんは、話し終わると、遠くのほうをボーと眺めるような目をしていました。

わたし(佐藤康行)は、彼女に言いました。

「めいこさん、大丈夫ですよ。
あなたは素晴らしい女性です。
幸せな恋愛も、結婚もすぐに手に入りますよ。」

******************************
いよいよ川谷一男さんとめいこさんが、運命の出会いをします。
そして、今までの人生の全てが、必要であったことがわかってきます。

では「出会いの章」に入っていきます。


この「男と女」をテーマにしたグループカウンセリングには、川谷一男さんも参加しています。
川谷さんは、私のカウンセリング以降、驚くほど人生を好転させていました。

仕事も塾の先生から、コンサルタント会社の営業に変わり、毎日、営業仕事に忙しくしていました。
あんなに、人を信用できなかった川谷さんでしたが、毎日、多くの人と会い、多くの人と信頼関係を築きながら、ニコニコと笑顔で幸せそう暮らしていました。

また、念願の由香さんのお墓参りにも行けました。
彼女のお母さんから「どうか、幸せな結婚をしてくださいね」と、優しく言われたのでした。

コツコツと粘り強く誠実な彼の素晴らしい性格が、お客様の信頼を得、
営業の仕事でも成績を上げながら、身内から借りたお金も少しづつ返していました。

また、以前貸したお金も、思いがけず返ってきたりして、彼の人生は、劇的に大きく変化していました。

ただ、どういうわけか、彼の前には結婚相手が現れません。
それだけが、私にとって、気がかりな事でした。
何人かの女性を紹介するのですが、なかなかお付き合いしません。

当日多くの男女が集まり、私のカウンセリングが始まります。
その中に、川谷一男さんとめいこさんも加わっていました。

このグループカウンセリングも、勿論、皆さんの心の中にもともとあるものを引き出していきます。
私のやっている事は、一貫して、こちらから教えるということはしません。

「究極の愛の結婚式」という、私独自の瞑想を行います。
この瞑想は、父親と母親が出会って愛し合わなければ、あなたは存在しない。

あなたが存在しているということは、たとえ、どのようにあなたの目に映っているとしても、
父親と母親が愛し合った結果だという、その宇宙の真実に目覚めてもらうための瞑想です。

その瞑想中、突然、めいこさんが激しく泣きだしました。
「どうしましたか?」と、たずねる私に、彼女は肩を振るわせて、こういいました。


佐藤先生、私、大変な事をしてしまいました。
こんなに、父と母に愛されてこの世に産み出して貰ったのですね・・・。
気がつきませんでした。

母に謝りたくても、もう母はいません。
どんな思いで、母がこの世を去っていったかと思うと・・・・。
胸が張りさけそうです。
ごめんなさい!
ごめんなさい、ママ。

パパにだって、わたし・・・。
パパだって、ママを亡くしてどんなに辛かったのか・・・・。
私、何にもわかっていなかったし、分かろうなんてしてこなかった。

わたし・・・・。
わたし・・・・・・。」

「めいこさん、大丈夫ですよ。
もう大丈夫ですよ。」

私はめいこさんの背中をそっとなぜると、こう言いました。
「めいこさん、さらに深く見てごらんなさい。」

そう言われて、さらに心奥深くをみつめためいこさんは、あっと驚きました!
そこには、思ってもみない、驚きの光景がありました。

タキシードを着たお父さん。
ウエディングドレスを着たお母さん。
ふたりがニコニコして、めいこさんを見つめています。

「あーー。
佐藤先生、父と母が結婚式を・・・・・!」

「私に笑っています。
あんなに嬉しそうな幸せそうな顔をして・・・・。」

めいこの頬を、涙がボロボロこぼれます。
「佐藤先生、私にありがとうって言ってます。」

「パパ!ママ!おめでとぉぉーーーーーーー!」
思いっきり叫びました。

「めいこをパパとママの娘にしてくれてありがとう
めいこはふたりの娘で本当に良かったよ」

めいこさんの心の奥底に現れた父と母は、腕を組み、本当に幸せそうに微笑んでバージンロードをめいこさんの方にゆっくり歩いてくるのでした。
そして、めいこさんの前に来ると、めいこさんをギュッと抱きしめました。

母が手に持ったブーケをめいこに渡します。
そして、母が来ていたウエディングドレスをめいこに着せると、ニッコリ笑って、めいこを抱きしめ、そしてそっと背中を押してくれるのでした。

「めいこ、幸せになるのよ・・・・」

「ママ、ありがとう。
パパ、ありがとう。
めいこは幸せになるね」

そう言うと、まだ見ぬ誰かの元へ、めいこは母のウエディングドレスを着て、歩んでいくのでした。

良かったですね。めいこさん。
めいこさんは、今、生まれ変わったのですよ。
おめでとう!
そう言う満面の笑顔の私の前で、めいこさんも満面の笑顔で私を見つめました。

愛されていなかったと思っていた人生。
男性は信用できないし、結婚は不幸だと思っていた人生に、今、めいこさんは、やっと幕を下ろすことが出来そうです。
そして、新たなドアが開かれました。


一方、川谷一男さんは、同じ瞑想の最中に、不思議な体験をします。
父と母の結婚式の瞑想の場面で、驚いたことに、その傍らにウエディングドレスを着た由香さんが立っているのです。

彼女はじっと一男さんを見つめると、一男さんに信じられなようなことを言うのです。

「一男さん・・・・・。
ずっと、私のことを思ってくれて、ありがとう。
でも、もう私のことは、忘れていいのよ。
誰かいい人と、結婚して下さいね。
そして、幸せになってください。」
そう言うのです。

驚いた一男さんは、私に不安そうに質問してきました。
「佐藤先生、どういうことでしょうか?
生前、由香さんは『私を忘れないでね』と、そう言って死んでいきました。
ですから、私はずっと彼女を忘れずにここまで来ました。

でも、今、瞑想では、彼女は私に、自分を忘れて、そして、結婚して幸せになるように言っています。
いったい、どういうことなのでしょうか?」

私は、瞬時に事の次第を理解しました。

「川谷さん。
川谷さんは、由香さんの存在を、出会おうとする女性を追い払ってしまう、川谷さんの”心のいじわる門番”にしてしまっているのですよ。
このまま、由香さんをずっと、罪人にしていていいんですか?」

「えっ?」
一男さんは私の言葉に、一瞬頭が真っ白になりました。

「あなたが、誠実に、死んだ彼女との約束を守ろうとしている事は分かります。
でも、それは、あなたは由香さんという存在を、あなたの前に現れる全ての女性を
追い払ってしまう、川谷さんの”心のいじわる門番” にしてしまっているのですよ。」
佐藤康行のいう言葉の意味がわかった途端、
一男さんは、ガン!といきなり頭を殴られたような、強い衝撃を感じました。

「あー!自分は、大切な彼女を、いじわる門番にさせてしまっていたのだ。
だから、由香さんが私の前にあらわれたんだ。」

「川谷さん。
彼女を“心のいじわる門番”から“心のウエルカム門番”にしてあげませんか」

「佐藤先生・・・・・!
ありがとうございます。
私は全く気付かずに、彼女をそんな風にしていたのですね」
そう言うと、彼の両眼から、熱い涙がぽとぽとと落ちてくるのでした。

「由香さん、ごめんね。
僕が間違っていたよ。
君を今、この瞬間から僕の最大の味方のウエルカム門番になってもらうよ」
そう心から思った瞬間、由香さんの嬉しそうな笑顔が目の前に現れたような気がしたのでした。

一男さんの心も、何故か大きな荷物を下ろしたような軽やかな気持ちになるのでした。


グループカウンセリングもそろそろ終わりに近づいてきました。
最後のペアワークが始まりました。
ペアの相手を変えながら、今日の体験をシェアしています。

一男さんの目の前に、笑顔のめいこさんが座りました。
「はじめまして。よろしくお願いします」
そう言って、今日の体験を語り合うふたり・・・。

一男さんの体験に、めいこさんは頬を紅潮させながら、
「川谷さんって、なんて素敵なんでしょう。
これから、川谷さんに出会う女性は、きっと、由香さんに心から感謝をされると思うわ。
だって、今まで川谷さんを結婚させずにいてくださったんだから。」
そういいました。
そんな輝くようなめいこさんに、瞬時に、一男さんは惹かれるのでした。

めいこさんの体験に、一男さんは
「私も不器用な人間ですから、めいこさんのお父様の気持ちはよくわかります。
お父様にとって、お母様は一生に一度の恋人だったのでしょうね。
子供のことも考えられないほど、ずっと愛してらしたのでしょうね。
お母様もお幸せでしたね」
そう言う、一男さんに、めいこさんは不器用そうだけど誠実なその人柄に、心から安心感を抱くのでした。

そのふたりを、遠くから見ていた佐藤康行の眼には、キラリと光るものが溢れていました。
それを誰にも悟られないよう、そっと拭くのでした。


「愛の真実」

私はなぜ、あなたに
燃えることができるのか

それは、
あなたと私は
もともと一ツの命だから

ふたりで一ツだから
あなたがいなければ私は半分

あなたに出会う為に
私はいろいろな所で魂の学びをしてきました

あなたと一ツになることは、
私が故郷に帰ることなのです

それは
神が決めた約束事なのです

だから
たとえ全世界が敵に回ろうとも
私の心はゆらぐことはないのです

一男さんとめいこさん
ふたりは長い長い旅を経て、やっとめぐり合いました

二人がめぐり合う為の、たくさんの経験。
その辛かったことの、苦しかったことのひとつひとつが必要だったのでした。

もともと一ツだったふたりが、いよいよひとつになる時。
そのストーリーが始まります。


それから数カ月。
川谷一男さんとめいこさんが揃って、佐藤を訪れました。

明るい表情のふたり・・・。
「佐藤先生。
私達、結婚をすることに決めました。」

「ほぅーーー!そりゃ、凄い!
ベリーグッドです。」
そう言って、自分事のように喜んでくれる佐藤康行。

佐藤康行はふたりに向かって、こんなことを話しました。

私は、ふたりに初めて会った時に、正直言ってわかりました。
『あっ、このふたりは縁があるな』と。

多分、ふたりが気付くより、
私の方が早かったような気がします。

そして、ふたりが今日来てくれて
「やっぱりそうか」という感じでした。

もともと一ツだったものが、陰と陽に分かれて、
別々のご両親の間に生まれ、
必要な分だけ愛に囲まれ、必要な分だけ苦労もされ、
そして、一番良いタイミングで、出会うべくして出会われましたね。

そして一ツになった。

一ツになったときにピカッと光った。
私はそんなイメージを持っています。

二人で一ツになったのですから、
絶対に半分にすべきではありません。

二人の真面目さ、
人間的な優しさ、そして
心の温かさを、私は十分理解しています。

あとは、心の奥にある本当の思いをお互いに出し合っていけば
黙っていても、仲良く幸せになることは間違いないと思っています。

これから二人でさらに光り輝き、
永遠に幸せになってくださいね。

いいですか。
幸せに限界はありませんから、無限に幸せになるのですよ。

幸せになればなるほど、
ご両親はじめ由香さんも幸せになっていきますからね。

こんなに幸せになってはいけないという限界などを、
一切持つ必要はありませんよ。

思いっきり幸せになって、
私にみせてくださいね。」

佐藤の言葉にうなずきながら、涙ぐむふたり・・・・・。

「佐藤先生は私達の魂の仲人です。
先生にお目にかからなければ、私達は一生結婚も出来なかったでしょう。
人生を変えてくださいまして、ありがとうございます」

佐藤も嬉しそうに、ニコニコとふたりを見ながら、さらに、ふたりにこんな事を言います。
「実はもうひとつ、おふたりに取っておきのプレゼントがあります。」


佐藤は目の前の白板に、丸く円を書きながら、愛が広がっていく図を書きました。

「これは、ユートピアエナジーという図です。
今朝、私からインスピレーションで出てきた図です。
この真ん中だけを見つめてください。」

しばらくすると、ふたりに目を閉じるよう言いました。
ふたりは手を取り合いながら、静かに目を閉じます。
カウンセリングルームの中は、静かな穏やかな空気に包まれています。

突然、信じられない出来事が起こりました。
それは、思いがけない人からのことば・・・・・!

その途端、めいこさんはわっと泣き崩れ、嗚咽が止まりません。
めいこさんは、溢れる感動で、心と体が震え、ただただ泣くしかありませんでした。
そして、あとからあとから、熱い涙がとめどなく彼女の頬を濡らし続けたのでした。

佐藤が静かに言いました。
「会えましたね」

「はい・・・・・!」
嗚咽が止まらないまま、めいこさんはそう返事をしました。

いったい、誰に会えたのでしょうか?

そうです。
ふたりの結婚を誰よりも喜んで祝福している人からの言葉でした。

それは、温かい声でこういっています。
「めいこさん。
一男さんと結婚してくれて、本当にありがとう。
わたし・・・・めいこさんには、心から感謝しているの。」

めいこさんには、その声の主が誰なのか、すぐに分かりました。
「由香さん・・・!」

 「めいこさん。
彼を見つけてくれて、そして心から愛してくれて、ありがとう。」

「一男さん、本当におめでとう!
私、とっても嬉しいわ。
やっと、心から愛する人にめぐり会えたのね。」

「これで私は、永遠の光の中で生きていけるわ。
ふたりが愛し合ってくれる愛の光の中で、私は永遠の愛の中で、生き続けることができるの。
ふたりが一ツになってくれたから、私は永遠の生命を生き続けることができるの。
ありがとう。」

「おふたりの愛が、やがて新たな生命を生み出し、そして、また生命が引き継がれていく・・・。
その永遠の愛の営みの中、私はあなたたちと、永遠に生き続けていくの。
そこは、憎しみも恨みも全てが超越された、ただただ愛だけの世界・・・。」

「もう、ひとりで苦しむことはないのよ。
もうひとりで、さみしい思いもしなくていいの。

あらゆるもの・・・・・。
そう・・・全てのものを超えた、究極の愛をふたりはもうすでに手に入れているの。
そして、全てが究極の愛の中にいるのよ」

「ほら、私の回りをみて」

由香さんの回りに目をやると、たくさんの人がいます。
その中心には、ふたりのお父さん、お母さんもニコニコ笑いながら、こちらを見ていました。

みんなが一つになって、愛の光の中で笑っています。
そして、みんなが「おめでとう」と言っています。

手をつないだ一男さんの目からも、ハラハラと涙が溢れます。

一男さんとめぐみさんの感動の涙の中、由香さんと多くの人は、ス―と光の中に、溶けていきました。
そして、あとはただ光があるだけ。
愛があるだけでした。


エピローグ

私たちは、いまだかつて、味わったことのない、まさに神秘ともいえる体験をしました。
その瞬間、雷に打たれたように胸がドキドキとしました。

でも、このドキドキは苦しいものではなく、幸せの鼓動でした。

今、とめどもなく流れる、この涙も、悲しい涙ではなくて喜びと感謝の涙です。
過去味わったことのない、心の奥の奥から出てくる涙です。

苦しいと思っていた何十年間分の人生が、最高の喜びとなって、一度に押し寄せてきました。
今まで、小刻みにあった幸せが、津波のように大きな幸せとなって、私たちの目の前に押し寄せてきました。

私たちは思わず「ありがとうございます」と手を合わせ、天に向かって、合掌をしていました。

今、私たちは、人生で味わったことのない感覚を体験しています。
まるで、さなぎから蝶々になったような・・・・・・・!
そのような感覚です。

今まで自分が求めてきたものとは、全く違っていました。
今まで自分が想像していたものとも、全く違っていました。

そのどれとも違う。
このような世界があるなんて!

私たちの人生にこんなことがあるなんて・・・!

最高の出会いだったのです。
全てが、最高の出会いだったのです。

この何ひとつ無駄のないタイミング!
これこそ、人間知を超えた世界です。

私たちは、過去、異性との出会いは少なったけれど、
今、最高の異性に出会えた。

私は最も幸せな男かもしれない。
私は最も幸せな女かも知れない。

ありがとうございました。
私たちの未来は大きく大きく開けました。

まっすぐな道が目の前に開けてきました。
何をやっていいかも見えてきました。

私たちの出来ることは何なのか。
もう、はっきり見えてきました。
そう!
「究極の愛」ここなんですね。

私たちは、全ての人の大切さがわかりました。
これが本当の夫婦ということ。
これが魂の結婚なんだとわかりました。

私たちは、揺るがない愛を今、感じています。

彼のおかげで、お父さん、お母さんを心から愛することができます。
彼女のおかげで、お父さん、お母さんを心から愛することができます。

お父さんもお母さんも、全ての人がみんな協力者だとわかりました。
そのもとになっているのが、お父さんお母さんへのわだかまりだったのです。
でも、あれが一番の協力者だった、
一番私達に気付きをくれたことだと分かりました。

お父さん、ありがとう。
お母さん、ありがとう。
そこまでして、私たちを気付かせてくれて、ありがとう。

私たちは最初から満たされていたのに、
ただ、そちらを見ていなかっただけでした。

私たちは、素晴らしい人生のドラマを与えられました。
苦しいことも悲しいことも・・・・・・。

そして、最後にこんな幸せを与えてくれたのは、
まさに、お父さん、お母さんでした。

ありがとうございます。
お父さん、お母さん。

私たちの問題は、もうこれでクリアになりました。
これからは多くの人たちのお役に立ちたい、そう思っています。

ああ・・・・、
お父さんごめんなさい
お母さんごめんなさい。
今まで恨んで・・・・。

今、これほど愚かな私たちでもやっと気が付いたのです。
私たちは、今までとんでもない間違いを起こしていました。

でも、今やっと気がつきました。
お父さんお母さんに感謝することによって、
人生にキャストとして関わってくださった多くの人たちの力によって。

本当の愛とは何なのか!
究極の愛とは何なのか!

それに気が付いた瞬間に、私達の中から、全てのわだかまりが夢のように消えました。
もう、ただただ、私たちは愛しあうだけ、それだけでいいのですね。
私たちの残りの人生はそういうことなのですね。



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