※この内容は、研究所が立ち上がる前の研究員個人ブログのアーカイブです
法則その5
「反省をしないこと」 第1話
E男は純粋で言われたことは一生懸命やる人です。
頑固な性格だと昔から言われてきましたが、その分、生真面目な性格で嘘がつけない人で、まっすぐな一途な性格です。
そんな融通がきかない性格に、時には自分でもどうにもならない事もありました。
なかなか人の言う事も聞くことが出来ず、我が道をいくタイプではありました。
そんな不器用な性格に周りからは「あの人は言っても無駄だろう」と思われていて、そのことに自分でも気付かず、気がついた時にはかなり問題が深刻になっている事もありました。
ある時、友人からE男は深刻な相談を受けます。
それは妻とうまく行っていないという友人の相談でした。
長い付き合いの友人です。
友人の性格も充分心得ています。
話を聞くと、それは友人が怒っても仕方が無いような内容です。
一方的に彼の妻の方に落ち度があるように思えました。
E男も、話を聞きながら「あの奥さんならあり得る出来事だ・・・・・」そう思ったのでした。
E男は、真っ直ぐな性格のため、まるで自分事のように腹が立ってきます。
そして、友人の苦しみや友人の家族の事を思うと、さらに腹立たしい思いに駆られます。
そのまま放っておくことも出来なくて、E男は友人にいろいろアドバイスをしました。
友人もE男の思いに大いに感激し、E男を頼りにしているようです。
しかし、その友人は、E男のアドバイスした通り、奥さんに正面切って話が出来ないようでした。
E男は心配のあまり、一生懸命になります。
しかし、一生懸命になればなるほど、何故か友人は口ごもったり言い訳がましい事を言い始めたりして、なかなかはっきりしません。
いよいよ業を煮やしたE男は、彼の妻に直接話をしてみようと思ったのでした。
E男に、そのことを話してみると、友人は嬉しそうに「よろしく頼むよ」と、そう言います。
友人に任されてE男は早速彼の奥さんに会うことにしました。
喫茶店で彼の奥さんと待ち合わせ、E男は友人のために一生懸命奥さんに反省をしてくれるよう話しました。
友人の事を考えて、いっしんに話をしました。
勿論、一方的にならないよう、奥さんの気持ちにも充分配慮をし、彼女の気持ちも聞きながら話をしたつもりでした。
ところが、奥さんは余計なお世話だと言わんばかりに、E男の話に耳を貸そうともしません。
他所の家庭内の事は口出しをしないでほしいというのでした。
そして、E男には関係のない話だと言うのです。
E男は友人の苦しみを代弁をするつもりで、ついつい厳しい口調で言いました。
なんとかして、彼女に反省してもらい、友人を苦しみから助け出してあげたかったのです。
彼は友人からも頼まれているので、友人の期待を裏切るわけには行かなかったのです。
それほど、E男はまっすぐで一途な人間だったのです。
E男は、真我プロカウンセラーを受講し、アドバイスはしないことや、かぶせる事は良くない事は重々知っていました。
ですから、最初は気をつけて話をしていました。
そのはずでしたが、全く理解しようともしない友人の妻に業を煮やし、大切な友人の心境を思いやって、余分な事まで言ってしまったのです。
「そこまで彼を苦しめるのなら、別れてやってくださいよ」
言葉に出してから「しまった!ちょっと言い過ぎたかな・・・・・」とは思ったのですが、もう言葉が出てしまった後で、何ともなりません。
さすがに言われたほうの奥さは、カンカンに怒ってしまいました。
「何の権利があって、そこまで私達夫婦に立ち入るの?いい加減にしてください!」
「あなたが話を聞こうとしないから、彼の友人として私も立ち入らざるを得ないのです。誰も好き好んでこんなこと、やっている訳ではないのです。
彼に頼まれて、やっているのです」
E男も少し言い過ぎたとは思いましたが、友人に頼まれていると思っています。
ですから、ここまで自分が友人の事を思っている事は、友人もわかってくれると思っていたのでした。
ところが、それからすぐに友人から烈火のごとく怒った電話が入りました。
「いったい、何をやってくれたんだ!いったい妻に君は何を言ったんだ!いいかげんにしてくれ。」
「私はそんな事を君に頼んだ覚えはない。」
「いったいどうしてくれるんだ!君のおかげで我が家は大変なことになっている。
全部、君のせいだ」
そういうのです。
確かに彼の妻に少し言い過ぎたかも知れませんが、それも彼に頼まれたからやったつもりでした。
E男としては友人のために一生懸命やったつもりでした。
それなのに、まさか、ここまで友人に言われるとは思いもよりませんでした。
長い間、付き合ってきた友人の始めて聞く言葉に、茫然としたE男は、どうしてそこまで友人が怒るのか、さっぱりわかりませんでした。
そもそも友人が相談してきた事じゃないか。
しかし、それと同時に、ひとつの家庭を自分の失言で壊してしまったのかも知れないと思うと、その事が気になって、胸が潰れるような気持ちです。
自分が彼の奥さんに話したことを思い出しながら、あの言葉がまずかったのか・・・・・。
あの言葉で誤解をされたのか・・・・・。
あの事を言い返したのが間違いだったのか・・・・。
自分が反省すべき点があるとしたら、いったいどこだったんだろうか。
どの言葉だったんだろうか。
自分のやったことに、次から次へと妄想も起こってきます。
しかし、そもそも友人が相談してきた話です。
こんな問題にひき込まれた自分は、実は被害者のようにも思えます。
その後の様子を聞こうと、友人に電話をするのですが、友人は電話にも出てくれません。
いよいよ思い余ったE男は、常日頃から尊敬している佐藤康行に相談することにしました。
「なんてことをしたのですか!」
「私はそんなことを教えていませんよ」
そう言われる事を覚悟して、あれこれ反省の気持ちで佐藤の前に出たE男に、佐藤康行が言った言葉は思いもよらないことだったのです。
(佐藤康行の言葉)
E男さん。
反省しなくていいのですよ。
だって、反省なんかしたら、私も含めて、全員反省しなきゃいけなくなるでしょ。